2016年10月17日月曜日

空冷エンジンにおける熱対策:機械学会論文

遠い昔、オイラが小学生だった頃、
軍事オタク向けの雑誌に
こんなQ&Aがありました。

Q:空冷エンジンと水冷エンジン、
  どちらが有利でしょうか?
A:一概には言えないが、空冷の方が
  構造が簡単なので、有利だといえる。

アホか!

・・・とまあ、今のオイラなら
こう言えますが、まだ小学生で
エンジンの知識など皆無だったオイラは
素直に「そぉか、やっぱり空冷だ!」
と信じてしまっていました。

ちなみに、念のため付け加えておくと、
ゼロ戦を初め、日本の大半の戦闘機は
どれも空冷エンジンでしたが
その理由は、構造が複雑で、
高い工作技術や材料技術などが必要な
水冷エンジンを作る技術が
日本にはなかったからだし、
前線の整備兵たちの能力も
必ずしも高くはなく、
水冷エンジンを扱えるレベルになかった
というのが背景にあります。

事実、ドイツから技術導入した
水冷エンジン(DB 601)を用いた
三式戦闘機・飛燕は
故障ばかりでまったく使えず
後に空冷エンジンに載せ替えられ
五式戦闘機になって
ようやく使えるようになりました。

こんな国が、戦後になって
GPZ900Rを作ったなんて
たぶん、多くの欧米人は
「そんなの絶対に嘘だ!」
と叫んだに違いありません。

さて、時代は流れて
オイラの家にある5台のバイクのうち
空冷はドカSS、ST250E、YSR80と
3台います。

しかし、誰がどう見ても
今となっては水冷エンジンの方が
あらゆる点で性能は上。

重量の点でも研究開発が進み
今や、水冷だから重い
というのは都市伝説のレベル。

逆に熱的に厳しい空冷の欠点は
今もそのままで、
特に我が家の3台で最も辛いのがドカSS。

渋滞の中でノロノロしていたら
冬でもオーバーヒート確実で
常に油温チェックは必須です。

これ・・フルカウルじゃなければ
もう少しマシなんでしょうか?

そういう意味で、もはや空冷エンジンは
見た目の美しさとか、そういう観点しか
メリットはないと言えますが、
とはいえ、バイクでは今も現役の技術です。

そんな空冷エンジンの熱対策について
シミュレーション計算の文献を見かけたので
紹介します。

二輪車空冷エンジン開発における熱流体解析

この文献によると

①フィン形状は長ければよいわけではない。
 エンジン前面はそれでよいが、背面は
 フィンが小さい方が根元まで風が入り
 冷却効率が高くなる。

②油冷(=強制空冷)の効果は大きい。
 排気ポートやプラグ周りの温度を下げるのに有効。
 特にプラグ周りは水冷並みの冷却が可能。



この図は、角型フィンで、フィン形状が
全面と背面同じ設計のモノ(①説明)



こちらは、丸型フィンで、
連続的にフィンの長さを変えたモノ(①説明)



これは、油冷なしの場合(②説明)



こちらは油冷ありの場合(②説明)

(図は、全て上の文献からのものです。)

油冷の効果はともかく
エンジン背面のフィンは短い方がよい
というのは驚きます。

排ガス規制が厳しくなってくるおり、
いつまで空冷が生き残っていけるかは
現段階では何とも言えませんが、
空冷の研究は続けていってほしいものです。

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